社員との距離
 社内会議でも活発な意見が出されます
その後岩見組に入社した岩見氏は、 常務となり人を動かす立場となったものの、 社員との関係についてはいつも悩んでいました。 「なあなあと仲良く、 仲間意識でやるほうがいいのか?」 それとも 「トップダウンで社員を指示した方がいいのか?」。 そこで岩見常務の出した答えは、 「自分がやれる仕事はなんでもすべてやり、 社員へは指示だけで、 責任ある仕事は人にはまかせない」 「コミュニケーションをとる時間があれば自分の仕事をしている方がよい」 というものでした。 しかしそのような考えで取組んでいた時は社員との会話もまったくと言っていいほどなく、 現場でも社員に命令し、 自分もただ目の前の仕事をこなす毎日でした。
ある日、 会社の経営状態が思わしくなく、 何かしなくてはと思っていた時に、 知人から 「同友会に入会し“経営指針を創る会”(以下 「創る会」) を受けてみないか」 と誘われました。 岩見常務は何かヒントが得られるかもと思い、 その場で即答してしまいました。
創る会では 「あなたのお客様は誰ですか?」 「何のために仕事をしていますか?」 などの質問を投げかけられましたが、 始めは質問の意味もまったく分からなかったとのこと。 しかし受講を重ねるうちに、 岩見常務は社員を物としか考えなかった自分、 自分一人が頑張れば会社はなんとかなると思っていた自分に気づき、 社員も自分も同じ一人の人間であるということ、 そして社員は大切なパートナーであることを学びました。
「当時の私は自分の心の中を見られるのが本当は怖かったのだと思う。」 とふりかえる岩見常務は、 創る会修了後に意を決して社員に「今の仕事をどう思う?」 と声をかけます。 けれども社員からの反応はなく、 このまま諦めてしまおうとも思いました。 しかしここで諦めてしまっては、 会社を変えることはできないと思い、 くり返し自分から挨拶や声を掛け続けました。
半年くらいたった冬、 朝礼で 「おはようございます」 と挨拶をすると、 返してくれた社員がいました。 それが 「継続すれば社員は心を開いてくれる」 という自信になりました。 現場での話し合いも社員と共に考えるようになり、 常に 「どうすればいいと思う?」 と質問を投げかけるようになると、 社員から 「こうすればいいと思います。」 と意見が出てくるようになったのです。 少しずつ社内には小さな気配りができる雰囲気がうまれました。 空き缶一つにしても以前は落ちていてもそのままにしていた社員が、 気がつけば拾うようになったり、 最後には周りの確認もしたり、 現場の仕事中に道路で車が通行する時には積極的に誘導したりと、 小さい所まで目配りや気配りができるようになりました。 少しずつ会社が活気づいていることに気づかされた岩見常務は、 「創る会で理念を創ることも大切だし、 会社の方向性を導くのも大切なこと。 しかしその理念も創っておしまいでは何の意味もない。 まだまだ自分達もやれていないことがほとんどだが、 意識して皆で力を合わせてやっていくことが重要だ!」 と力強く語ります。
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