組織問題研究例会

「見事に停滞を脱した大阪同友会の実践」
   
〜 学べる例会づくり、 増える組織づくり 〜

報告者) 大阪同友会 組織本部長  宮 井 賢 次 氏
           
(サンフレックス(株) 社長)

 6月20日 (火) 若林区文化センターを会場に、 組織問題研究例会が開催されました。 当日は拡大理事会として、 各支部地区役員を中心に50名が参加。 10年余りにわたり 「学べる例会づくり」 に努め、 改善活動に取り組んできた大阪同友会の事例に学びました。

同友会の原点は学びあい

 当社は、 先代社長 (父) が自動車のメーターケーブル製造業として創業し、 来年60周年を迎えます。 時代と共にその割合は減少、 フレキシブルワイヤーにシフトし、 幅広く産業の動力伝達器具として使われています。 私が32歳の時、 先代社長はあと3ヶ月の命と宣告されました。 どう経営していったらいいのか悩む私に、 先代社長からのバトンを運んでくれたのが同友会の先輩会員たちでした。 入会のきっかけはそれぞれでも、 皆さん何らかの目的を持って入会されたのは確かでしょう。 悩んでいる方は悩みを解消するために、 悩みのない方は潜在した課題を見つけるために、 互いに指摘しあい、 気づいたことから学びあうのが同友会なんだろうなぁと思います。

支部 ― ブロック ― 全大阪府 (本部)

 大阪同友会は約2,700名の会員がおり、 大阪全体としての本部がさらに5つのブロックに分かれています。 1ブロックは500名前後で組織され、 さらに3つ〜5つの支部に分かれ、 全18支部で組織されています。 仙台支部は約560名と伺っていますので、 仙台支部を大阪の1ブロック、 5つの地区を大阪の5支部と考えていただければイメージしやすいと思います。
  支部の役割は 「いい例会づくりと増強」 に絞っています。 本部は求人活動、 政策活動を行います。 ブロックは3つくらいの支部が集まってひとつのブロックを形成して、 支部と本部をつなぐ役割を持っています。 経営指針成文化運動はブロックで行います。 また、 50人程度の小さい支部の救済も目的の一つです。 少人数で同じメンバーばかりでは固定化し、 次第に向上心も薄れてきます。 ブロックで応援し、 支部間の交流も増え、 支部の活性化にもつながりました。

会員数が減る中での支部長就任

 11年前、 私は旧東大阪支部 (現東大阪ブロック) の支部長を仰せつかりました。 私の前の支部長は強いイニシアチブを持った人でした。 しかし、 同友会は民主的運営を活動の核に据え、 例会の参加・不参加、 入退会も自由な団体ですから、 支部長だからといって上意下達で会員を動かすことはできません。 前支部長も次第に頭打ちを感じ、 最終的には歯車が狂いました。 他人のマネで経営ができないというのは、 同友会運動にもまったく同じことで、 私は支部長就任にあたり、 理念は引き継いでも方法は自分のカラーを大切にしようと思いました。 そして支部づくりと役員づくりに力を注ぎました。 会社でいう企業づくりと社員づくりです。
  ある時、 熱心に参加していた役員の一人が、 突然会合を欠席するようになりました。 幹部社員が不正を働き、 ひどく落ち込んでいると聞いた私はすぐに訪問し、 「退職金と思ってあきらめたらええやん」 と励ましました。 時が経ち、 気持ちに整理がついた彼は、 支部長の私を支えてくれる片腕になりました。 経営者として社内の問題はつきもの、 こんな事例がいくつもあるのですが、 仲間として真剣に関わりあうことで信頼関係が生まれてきました。 理念をどう伝えるかが大切で、 その熱意で周囲は動いてくれたのです。 そういう意味でも、 経営者としての姿勢も同友会に取り組む姿勢も基本的には何の変わりもないと学びました。

例会報告者が学べる ―打ち合わせの徹底

  「例会で報告する人が一番勉強になる」 と、 話の苦手な方でも打ち合わせに徹底的に関わることで経営体験を引き出そうと積極的に関わりました。 基本的に支部会員内から報告者を立てるようにしています。 バブル崩壊後、 3,500名いた会員が2,400名まで減るといった現状を目の前に、 例会づくりも根本から見直す必要があると感じたからです。
  例会委員長が中心になり、 報告できそうだという会員に目星をつけ、 打ち合わせとして2〜3人で報告者の会社を訪問するようになりました。 経歴を聞きながら 「○○って、 それはすごいなぁ」 「それってなかなかできないことだけどどうやってるん?」 と引き出し、 それをもとに後日7〜8人でリハーサルを行います。 さらに補いながら打ち合わせを重ねて本番に臨むことで、 初めて報告する方も次第に緊張の糸がほぐれていきます。
  「大丈夫、 レジュメなんていらないよ」 とおっしゃる方もいますが、 報告内容に対して絶対妥協してはいけません。 報告者が話したいこととわれわれが聞きたいことが大きく違う場合もあるからです。 ある年配経営者は若い頃の苦労談に、 ある IT 関連の若手経営者は営業方法に50分の例会報告の半分以上を費やしてしまった事例もありました。 これには 「やはり綿密な事前打ち合わせが大事だ」 と再確認させられたものです。 深く関われば関わるほど、 必ずそれぞれの会員が持つ 「辞書の1ページ」 の内容が見えてきます。
  同友会の例会報告者は講演者ではなく報告者と言いますが、 報告を題材に自分におきかえて学ぶのが同友会の特徴ですので、 「例会報告者=問題提起者」 です。 また、 同友会の例会は 「変化球二回ひねり」 といわれるように、 経験も企業規模もキャラクターも違う経営者から話を聞き、 それを自分の業種、 経営、 立場におきかえてひねって学びます。 それを討論でさらに他の参加者の学び方や聞き方、 発言から自分におきかえて学ぶことができます。
  ある日、 グループ討論の進行について 「討論がなされず質問だけで終わっているグループがあるようだ」 と役員会で問題提起がありました。 旧東大阪支部は分区によって、 新たにブロックの役員も必要になりました。 支部内に経験力不足の役員が増えたのだと実感させられ、 コミュニケーション不足も露呈しました。 そういった問題を始終見直しながら取り組んでいくことが大切です。
  例会委員長と増強委員長が 「こんな例会では増強につながらない」 と喧々諤々意見を戦わせたこともありました。 いいものにしていこうというお互いの思いがあってのこと、 これも大変意義のあることです。 いい例会をし、 グループ討論を行うことで課題を見つけるのが同友会のよさで、 これがなければ同友会ではないと思います。 初参加の方にもよい刺激となり、 次の紹介にもつながります。 そしてまたいい例会を開催するという繰り返しが、 いい方向に向いていくための基本になっていくのです。

企業なくして同友会なし、
  同友会なくして企業の前進なし

 よく 「企業づくりと同友会運動は車の両輪」 と言われます。 企業づくりの中心となる経営理念、 経営指針をなくして企業の発展はなく、 今後の方針も決められません。 また経営指針の成文化運動抜きに同友会を語ることはできません。 経営指針をつくって経営の中身がどう変わりつつあるか、 それを報告するのが例会です。 その報告を例会の中で徹底的に討論しあって、 初めて経営指針も生きてくるのではないかと思います。

地域を担うリーダーをめざそう

 近年、 大阪から大企業が減っています。 松下も海外移転を進め、 東京に本社機能を移転する企業も増えています。 現在ではトヨタやヤマハの下請の多い静岡が大阪の工業生産量を追い抜きました。 東大阪も最盛期の12,000社から現在では8,000社を割っています。
  昔は商売といえば江戸ではなく難波といわれたように、 大阪人には日本を支えてきたという自負心があります。 小規模ながらも静岡や愛知より企業数が多い大阪は 「われわれが雇用を守る、 中小企業が日本を支えている」 という強い意識を持っています。 だからこそバブル崩壊による会員数の激減を乗り越え、 ここ数年は会勢も増えています。
  同友会も近年金融アセスメント法制定運動や中小企業憲章制定運動など、 中小企業が日本を動かすという意識をもって対外的に発信することが多くなってきました。 宮崎本店の宮崎社長 (三重同友会代表理事) がよく 「昔の異端が今では正統に」 という話をされますが、 同友会もこの負けん気が原点ではないでしょうか。 その思いをどう伝えるか、 新しいリーダーをどう育てるかが今後の宮城の発展に向けたカギになると私は思います。
  同友会が掲げる 「自主・民主・連帯」 の特に 「自主」 の部分、 宮城をよくするもしないも選ぶのは皆さん自身です。 赤石会長がよく 「人は誰でも“題名のない伸縮自在の袋”を持っている」 と話しますが、 同友会に例えれば、 名前のない伸縮自在の袋に 「宮城同友会」 と言う名前をつけて、 皆さん自身がそれをどうしていくかを決めていく、 それが自主の根底にあるのです。 原点は自分の地域にあります。 皆さんの地域の可能性を伸ばしていただきたいと思います。
(※文責は同友会事務局にあります)



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■例会運営のながれ

■2006年度 先生方と経営者の 『共育懇談会』

 

■活き生き企業訪問記
■中同協第38 回定時総会参加報告 7/13〜14 石川   ■2006 経営研究集会開催の
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「人を生かす経営」
〜 中小企業における労使関係の見解 〜