活き生き企業訪問記

地域に愛される懐かしの味の物語
〜“クリームサンド”は気仙沼の宝物〜
 

気仙沼パン工房

代表 鈴 木 秀 子 氏
(気仙沼本吉支部会員)

 

幾多の歴史の変遷のなかで

  しっとりした焼き上がりのコッペパンのなかに甘くなめらかなピーナツクリーム ── 気仙沼パン工房でまごころを込めて作られている“クリームサンド”の歴史は50年ほど前にさかのぼる。 当時、 地元にあった 「奥玉屋」 で誕生してから、 その後 「気仙沼製パン」 へと受け継がれた。
  当時、 その気仙沼製パンを製造元にしていた販売会社で店長として活躍していた鈴木代表は、 さまざまな経緯で7名の従業員とともに 「気仙沼パン工房」 を立ち上げる。 長年“クリームサンド”作りに携わってきたベテラン職人の方々の協力も得て始まったものの、 作る数は1件の地元のスーパーに納める5個の他に店売り用の数個というところからのスタートであった。

地域が待っていた懐かしの味

  一時は地元で途絶えつつあったこの“クリームサンド”を鈴木代表は顔見知りのところを一件ずつ訪ねて売り込んでいった。 そのうち、 タクシーの運転手の方々が 「これがあの懐かしい昔の味だ」 と買いに来るようになり、 しだいに地元のスーパーの引き合いも殺到し始め、 その味も広く知られるようになっていった。
  「昔から伝わるこの大切な味を地元気仙沼で復活させようと取り組んできました。 作る側でなく食べる側の感覚を大事にしてきたらまわりのお客さんが PR してくれるようになりました。」 と鈴木代表。
  味の決め手は 「(調合の) 配分は内証」 というピーナツクリーム。 この味を練り上げたベテラン職人の熊谷さんが仕上げる。 他の人がレシピ通りに配合しても同じ味にはならないという職人技が光るクリームを、 毎朝、 小麦粉から仕込んで作られる焼き上がりのコッペパンにたっぷり挟む。 防腐剤も表面にツヤを出す油もいっさい使わないまさに手作りの味。
  現在はこの“クリームサンド”に“ごまクリームサンド”と“黒糖クリームサンド”、 その他にも菓子パンや調理パンも作られている。

看板商品の“クリームサンド” “ごまクリームサンド” “黒糖クリームサンド” 現在は40本の小麦粉を使いきるように
なった

信頼できる仲間と苦楽をともに

  「仕込みは一番早い人で夜中の12時半、 その後職人さんたちも2時にやって来て始まります。 それが毎日のように続くのですから忙しい時期になると大変です。 でも、 誰一人文句を言う人はいません。 なるべく負担をかけないように気遣うようにしていますが、 15名の従業員みんなが責任をもって仕事をしてくれています。」
  「従業員の年齢も幅広く、 20代の方もいれば60代の方もいます。 ちょうど各年代の方々がいるのですが、 そうした方々をよくまとめてくれているのが40代の幹部の方。 一時期は仕事を続けるかどうか悩んでいましたが、 あるとき職人さんが一人休んだのをきっかけに私も自ら現場に入り、 とことん関わるようにしました。 最初は、 きつい現場の仕事に私が音を上げると思っていたようですが、 だんだんと続けていくうちに信頼関係が生まれたと思います。 今は私が店を空けるようになっても、 その方を中心に段取りをしてくれるようになりました。」 (鈴木代表)

“気仙沼の宝物”を将来に伝えたい

  開業から5年目を迎え、 気仙沼・本吉地域の主要スーパー、 高校や病院の売店のほか、 一関、 陸前高田、 大船渡各市にも毎日配送される“クリームサンド”は多くのファンに支持され、 店によっては一日に70〜80個も売れるとか。 一般的にパンの売り上げが落ちる夏場も、 帰省した人の 「これが食べたかった」 と 「お土産に」 とが重なり、 安定した売れ行きを示すという。 取材で訪問した日 (7/18) もフル稼働。 大きな小麦粉の塊をボールに入れたり、 慣れた手つきで次々とパン生地を窯に入れたりと、 工場は汗ばむ熱気に包まれていた。
  「時には卸値を下げるよう求めてくる方もいらっしゃいますがうちでは絶対に下げません。 この手作りの味を守っていくためなのだとご理解いただくようにしています。」 (鈴木代表)
  “気仙沼の宝物”として愛される味を、 ひたむきに、 ていねいに。 その姿勢はパンだけでなくお客様や地域にこれからも伝わっていくことだろう。

丹念にしっとりと焼き上げる クリームサンドの他にもいろんな種類のパンを手作り


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